夢を見た。
私は友人とレストランで食事をしている。楽しく談笑していると、隣の席にひとりで座っていた年嵩の女性が、友人に「女の子がそんな言葉を使っちゃいけません」式の説教をしてくる。うわ、と思った私は、わざとむせたフリをして大きな空咳を繰り返したり、食器をガチャガチャ言わせたりして会話を妨害しようとするのだが、女性はなかなかこちらに注意を向けてくれないので途方に暮れる。
というところで目覚めた。年が明けてから覚えている夢が初めてなので新年初夢ということになるかもしれない。
仕事に出掛けた後も、ふとこの夢のことを考えてしまう。女性が女性の足を引っ張るというシチュエーションがなぜ私の夢枕に立ったのかわからないし、私の対応にも釈然としないものがある。はっきりと物申すでもなく、友人の手を引いて連れ出すでもなく、喧嘩を売って注意を逸らそうとしていた。買われたらどうするつもりだったのか。
お昼にインスタを見ていたら、ヴロツワフ劇場のストーリーで衝撃のグルック《ドン・ファン》トレイラーが流れてくる。ジョルジョ・マディア(Giorgio Madia)というベジャール・バレエ団などで活躍していた振付師がグルックのバレエ音楽に振付をしたもの。ドン・ファンといえばモーツァルトとリヒャルトしか知らなかったけどグルックが書いてたのね…。
2014年にベルリン国立バレエ/コーミッシェオパーで行われたプレミエの際に出たチラシがこれ。
この時のタイトルロールはレオナルド・ヤコヴィーナ(Leonard Jakovina)。めちゃくちゃ観たいんですがソフトとかはないっぽく……。ヴロツワフは配信してくれるのかしら。
最悪なことを言うのだが、どこまで鍛えたところで所詮見せ筋なバリトン歌手がやるよりバレエダンサーがやったほうが魔性の男ぶりに説得力がないか?
職場のロッカーを開ける度に、コーヒーの匂いがする気がしていた。吊り下げているミリジャケのせいかもしれない。本当のことはマスクをしているからわからない。
U.S NAVYとタグに書かれたそのミリジャケは、買った時から何となくくさかった。別に四六時中くさいわけではない(と私は思っている)のだが、体温や暖房であたたまるとちょっと感じる。私はそれを「海兵隊員の体臭」と呼んでいた。
本当にアメリカ海軍の隊員が着ていたのかは知らない。京都の古着屋で買った、というのを考えたらその辺の日本人の体臭なのではないかとも思うが、徴兵帰りの留学生が売った、とかも、ない話ではないと思ったりもする。
そして、変態じみた話で恐縮だが、何となく屈強なアメリカ人に守られているようで悪くないのだった。防寒性能もかなり高く、この数年、一番寒い時期になるといつもそれを着ている。パリへ旅行したときにも持っていった。
それが今日はコーヒーのにおいだった。
気付かないうちに溢してしまったのだろうか? 記憶をひっくり返してみても、この年末年始スタバには入ったが、自家焙煎のコーヒー店などには行った覚えがない。
家でコーヒーを淹れたときに零してしまったのかもしれない、と思いながら私はロッカーからものを取り出して、帰路に着いた。あたたかい電車の座席に座ったらやはりコーヒーのにおいが鼻をかすめて、少しぼんやりしてしまった。
もう私のミリジャケはこれからずっとコーヒーのにおいなんだろうか。
架空の海兵隊員は悪くないけど、コーヒーのにおいもダンディズムと結び付く。それはそれでいいかもしれない。私の周りでコーヒーを愛好してる人って8割女性なんだけど……特に豆を挽くまでやる奴は……。
ふとリュックを開けたときに、全てが判明したのだった。
!!!!!!!!!!リュックの中にコーヒー豆200グラムが入っている!!!!!!?!?!??どうして!!!?!??!?!?!?(昨日部屋で取り出そうと思ってそのままにしていたのを思い出した顔)
架空の海兵隊員、これからもよろしくね……。