20220108 一穂ミチを読みまくっている

 昨日食べてすぐ寝たのが災いして全然眠れない。ということで一穂ミチ『ペーパー・バック』を読む。〈新聞社シリーズ〉の掌短編集。谷崎か?みたいな女中の話とかすみれ珍道中とか入ってて最高。

 そしてついに我慢の緖が切れてUnlimited入りしていない〈新聞社シリーズ〉最終巻の『アンフォーゲタブル』を買ってしまう。

〈新聞社シリーズ〉はどれもおもしろい。どうやってここまで香港と新聞社を取材したのかと思う『is in you』。谷崎か?みたいな歪な三角関係を見事に描いた『off you go』。男性社会で男が女に負ける劣等感をびっくりするほど精緻に織り込んだ『ステノグラフィカ』。

 Amazonで見たBL界の高村薫、というレビューは結構面白い喩えだと思う。シチュ萌を突き詰めた結果突き抜ける(川柳)みたいな。

 最終巻の『アンフォーゲタブル』もまたそうかもしれない。短編(ベッドシーンがなければそう言えるだろう)恋愛小説としての完成度が凄まじい。7合目くらいまでのあらすじはこんな感じです。ネタバレです。

あるトラブルから報道部を外された新聞記者が証明写真を撮っていると、泥酔した男がブースに焼き鳥屋と勘違いして乱入してくる。記者は製薬会社で働いているというその男に惹かれていくが、男は相手の死によって終わった初恋に引きずられている。その記憶を断ち切ろうとして男は記者をドライブに誘い、五里霧中のなか霧笛(もちろんブラッドベリが引かれる)を聞きながらのカーセックスをせがむ。ことが終わると男は姿を消し、記者のもとに製薬会社が内部で薬事法違反を隠蔽しているという証拠書類が届く。男の初恋の人は隠蔽工作に疲弊して自殺したのだった。内部情報の提供者には会うことを禁じられ、記者は外報部に異動し、海外で十七年を過ごす。

 五里霧中のなか霧笛を聴きながらカーセックス、なんでこんなもん思い付くんだ? と本気で怖くなりました。

 ここから先もものすごくおもしろい。

 いまは『ペーパー・バック2』をちびちびと読んでいます。