『犬と街灯』さんにて「ブラームスの乳首 他十二篇」委託販売させていただいております。

 ブログのタイトルまんまですが、そういうことになりました。犬と街灯さんは大阪の豊中市にあるZINE書店・リトルプレス・イベントスペースです。紹介文は店主の谷脇クリタさんが作ってくださいました。

没後150周年に複製されたチャイコフスキーと、その一部分をピンク色にする任務を帯びる研究者との交流を描く『チャイコフスキーの亀頭』、嗞瑠〈ちゅ〜る〉を携えて虎園を訪れた袁傪の前に虎と化した旧友が現れる『月夜に虎が役人を背に乗せ、峠を疾走せし記(付補遺)』ほか、露出した魂が疾駆する13編。

 いやあ、これってすごく嬉しいですね。「その一部分」ってものすごいご配慮いただいてるのにタイトルにそのものズバリが書かれてるので全く意味がないこととか。露出した魂が疾駆する、もすごい嬉しい。「暴力と破滅の運び手」そのものって感じがします。エンタの神様で言われるやつみたい。

 

チャイコフスキーの亀頭」が本当に思っていた以上の方に読まれてワ~っとなっているうちに、本当にある日なんとなくTwitterを続ける心が折れて、8年間やっていたアカウントを消しました。

 それは、本当に何かきっかけがあったのではなくて、なんとなく怖くなったのです。私はこのままどうなってしまうんだろう?と。すぐに治まってしまった恐怖なのですが。

 ふと戻りたくなったとき、私が最初に訪れたのは、犬街ラジオの配信でした。ラジオというのがよかったのだと思います。聞いているだけでいいから……一方的なコミュニケーションが嬉しかった。

 コロナの波の間に行われた犬街オープンマイクに伺って、同人誌を作ったら犬街に委託させていただいてもいいですか? と尋ねたら快諾してくださったのが、この本を纏めようと思ったきっかけだったと思います。そして悩んでいるうちに文フリの申込が終わってしまったときに助けてくださったのも犬街さんでした。

 オープンマイクから帰るなりすぐ始めた作業は、心穏やかに生活ができなくなり家出ギャルになったりしたせいもあり、入稿当日まで掛かりました。本当に大変でした。きちんと推敲をせず作品を公開していた過去の私を何度も罵りました。唐突に過去作のリライトをしたり書き下ろしを入れようと思い立ったりしていたのもアホだった気もしますが。

 

 もともと物体としての本というものに思い入れがなく、電子書籍やインターネットで読めるならそれが一番、と思っていた私です。9割再録の本でも喜んでいただけるとは本当に思っていませんでした。

 でも、矛盾していると思うのですが、私はアナログな作業が好きです。絵も鉛筆とかボールペンで描くのが好きだし。音楽は生演奏こそ至上という人間がそうでないはずはないというものかもしれないのですけれど。

 だから、本の表紙を考えたりするのは本当に楽しかったのです。結局は絵葉書になったコラージュも、電子書籍の表紙になった乳首のペンダントトップも、製作している間は脳が沸騰するほど楽しかった。文庫本の装丁もあれこれ考えて、とても綺麗に出来たなと思います。むかし一度だけ出したぼくらベアベアーズのコピー本を作るのも、そういえば本当に楽しかった。

 そういうわけで、これは楽しんで作った本です。

 私が楽しんで書いた小説が、私が楽しんで作った形で皆さんのお手元に届いたことを、本当にうれしく思います。

 ありがとうございました。