水道管が凍っていないことに安堵する。去年の寒波ではうっかり給湯器を凍結させてしまって、近所の友人の家までシャワーを借りに行ったのだ。

 うだうだと仕事のチャットを打ったりして、昼過ぎに外に出る。アパートの敷地を出かけたところでこれはだめだと思って引き返し、「絨毯」と呼んでいるストールを持ってくる。家を出た瞬間に吹雪きはじめて、「そういえば雪の日って傘を差すんじゃなかったっけ」と思ってリュックを探したけれど、入っていなかったので仕方なくストールを頭までかぶる。

 リサイクルショップに寄る。私は少し前から椅子を探している。いま私の家において静止できるスペースはバランスボールとベッドしかなく、その中間地点を設けなければ在宅での仕事は一生捗らないだろうと思っている。あいにく私の求めるような椅子はなかった。とはいえ、私はどのような椅子を求めているのか、わからない。

 窓と充電コンセントのある店に行き、仕事をする。時々、前職の同僚とチャットをする。自分の職場の仕事をたまに私に外注してくれる人で、今でもよくチャットをする。

 窓の外で吹雪いたり止んだりを繰り返すのをぼんやり眺めていたら、視界にいきなり人間が入ってびっくりする。ここは2階だ。はしごを掛けて登っているらしい。ヘルメットをしないんだな、と心配になる。そのうち職人さんがドカドカと中に入ってきて、工事の相談を始める。窓際は工事に使うだろうと思い、私は店を出る。

 家に帰ってから少しだけオタクとチャットをして、IKEAのサメを洗濯しながら仕事の続きをやる。意外と作業量がヤバいのではないか、ということにその時点でようやく気づき、顔を真っ青にしながら作業をする。

 ご飯を食べる時間を逃したので出前館でカレーのセットを注文する。しばらく仕事を続けているとインターホンが鳴り、ドアを開けるとカレーが届いている。大きなナンと、サラダと、チキンティッカとバターチキンカレー。これで送料込み1000円。どういうことなのだろうと思いながら食べる。おいしいけど、本当にどういうことなのだろう。

 仕事を切り上げて日付が変わるくらいまでうだうだと過ごし、意を決して皿洗いをやる。Audonで作業音を配信する。嫌な作業は配信すると始められるということに気付く。動き始めるよりも配信を始めるほうが作業コストが低いから?

 乾燥機で回り続けていたサメを回収する。

 

 

2023年ふりかえり

身体が2つあっても足りないスケジュールでした。

特に音楽がね……譜読みに信じられないくらい時間がかかるんですよね……どんな楽譜でも初見で弾けますってぐらいピアノとヴィオラをやっておけばよかった、という後悔が止まりません。まじで学生の時もっとやっておけばよかった。あとレッスンに行っておけばよかった。

というわけでここ数年でいちばん小説を書きませんでした。

いろいろやりすぎて記憶を失っている気しかしないしヌケモレがありそうなんですが、以下色々まとめておきます。

 

💻小説関連

1月:エッチな小説を読ませてもらいま賞開催

3月:エッチな小説を読ませてもらいま賞結果発表

5月:『エッチな小説を読ませてもらいま賞受賞作品アンソロジー』出版

8月:京都SFアンソロジー「ピアニスト」寄稿

9月:ケモのアンソロジー私費出版

10月:第3回かぐやSFコンテストにて大賞受賞

11月:東京文フリ出店、かぐやSFコンテスト授賞式@かぐやフェス

12月:CALL MAGAZINE「ヴォイテク」寄稿

 

🎻音楽関連

1月:オーケストラ・リベルタ公演

3月:音楽関係の職場から転職

4月:地元プロオーケストラ(キヨートシティ・オーケストラ)の専属市民合唱に入団

6月:ヴィオラのレッスンに通いはじめる

7月:オーケストラ・リベルタ公演

8月:合唱本番、SFマガジンにレビュー寄稿

9月:CRAZY GAL ORCHESTRA公演

10月:合唱本番、阪神百貨店「音楽の夕べ」出演

12月:合唱本番(第九)

 

📚出した同人誌

2023年5月『エッチな小説を読ませてもらいま賞 受賞作品アンソロジー

https://brutetaro.booth.pm/items/4780275

 

2023年9月『暴力と破滅の運び手セレクション! ケモのアンソロジー

https://brutetaro.booth.pm/items/5085265

 

📜書いた小説

「祭典」(6000字)野咲タラさんとの合同誌「やさいとおこめ vol.1」

https://ncode.syosetu.com/n7248io/

オーガニック・キャンプでエッチな怪異に付きまとわれる話。

 

「かめのこ」(4000字)同上「やさいとおこめ vol.1」

https://ncode.syosetu.com/n7253io/

ユニ男スピンオフ。

 

「ウメゴン、万博記念公園に行く」(2000字)谷脇クリタ編「クジラ、コオロギ、人間以外」

https://inumachi.stores.jp/items/64657e58cd7f16002a921c71

みんぱくガムラン体験コーナーの動画がネットに落ちていて助かった……

 

「ピアニスト」(12000字)Kaguya Books『京都SFアンソロジー/ここに浮かぶ景色』

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784784541492

なんか全然まとまらなくて30000字くらい雄山(作りかけの器を割ることを指す)した。

 

「ヘッド・ハンティング」(9000字)東京文フリ無配

https://novel18.syosetu.com/n0838if/

途中で出てくるおじいさんがエッチだったと評判に。

 

「おおなまず」(4000字)谷脇クリタさん編「石橋濡久アンソロジー:キミはボクの梅雨前線」

https://inumachi.stores.jp/items/646ec0002d6e83002d87d276(跡地)

エチ賞マスコットキャラクター石橋濡久さんを題材にした創作アンソロジー。ひとりだけ4000字になってすみませんでした。

 

また、濡れおじ夢小説は随時pixivにて連載(?)中です。

 

「真夏のサンタクロース」(2000字)

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20052332

濡れおじ同居人という設定。夢主がマライヒみたいな誘い方をしている……

 

「インターバル・サマー」(2000字)大阪文フリ無配

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20725952

濡れおじ同僚設定。

 

「自分の足で」(6000字)東京文フリ無配

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21003830

濡れおじがバイト先のマネージャー(バツイチ)設定。

 

どんな設定にも対応できるのが濡れおじの強みですね。2023年最もTLでもっとも性欲を向けられていた男性なのでは[独自研究]?

 

「P. N. P.」(3000字)

edition.nordによるファクトリーdddd c/o 京都dddギャラリーに集まっていた方々で作った「assemble」という同人誌に寄稿(完売、再販予定なし)

https://fedibird.com/@nosakitara/110446471733273119

「木」がテーマだったので、樹脂で強化されたベニヤ板と自動人形の話を書きました。

 

「九度複製した男」(10000字)さなコン3提出

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20015223

今年は飛浩隆トリビュートしないぞ! と思って〆切当日に書きはじめたら思いっきりそういう話になった。

 

「月のこどもたち」(11000字)『ケモのアンソロジー

https://booth.pm/ja/items/5085265

ネタに困ったときは……→公的機関の話を書く(悪癖では?)

 

「マジック・ボール」(4000字)第3回かぐやSFコンテスト《大賞》受賞

https://toibooks.thebase.in/items/80488639

最終候補発表から先「大変なことになってしまった……」と震えていました。

 

「マジック・ノベル・ボール」(2000字)かぐやフェスにて配布

https://x.com/knit_da/status/1713889461409640916?s=20

「マジック・ボール」スピンオフ掌編とお香を入れた巾着袋。編み物系インフルエンサーknit_daさんとのコラボ商品。

 

ヴォイテク」(1000字)紅坂紫編「CALL magazine vol.42」

https://www.instagram.com/p/C1PPt2_hrR4/?igsh=MWwwZWd4dWlvb3lyNA%3D%3D

12月25日が配信日だったのでクリスマスらしいお話を……と思ったのに結果的に野育ちの男×高慢エリートのケモBLになって笑った。

 

🤔エッセイ等

「エサやりおじさん考」藤井佯編『鳩のおとむらい

https://booth.pm/ja/items/5142375

私のエッセイの本質は「何か考えているようで、あんまりそうでもない」です。

 

CRAZY GAL ORCHESTRA 公式note記事(はこびてゃ名義)

https://note.com/crazy_gal_orch/n/ne5bc58c7b763

https://note.com/crazy_gal_orch/n/n2b5a26df5693

怪文書しか書けへんねやこの人……

 

かコ3(第3回かぐやSFコンテスト)で大賞をいただきました

第3回かぐやSFコンテストで大賞をいただきました。

最終選考に通ると思っていなかったのでその時点でびっくりしてしまい、また候補作がどれもすばらしく、まさか受賞するとは思っていませんでした。

そういうわけで、そんなに期待をしていなかったのもあって、9時半まで寝ていました。寝起きなので、結果を教えてもらっても自分でHPを見に行っても「え…?」みたいになってしまい、しかもそのまま合唱の練習に行ったため、きちんとした反応ができておりませんでした。

そういえば最終選考の発表日はCrazy Gal Orchestraの結成コンサートで、準備の大半が終わっていなかったため、きちんと喜ぶことができず謎の顔ハメパネルを作っておりました。

さらに言えば「マジック・ボール」を書いたあたりは『ケモのアンソロジー』の編集作業に追われていたため、記憶があいまいです。

公開以後から「マジック・ボール」に対する感想をたくさんいただいて、とても嬉しかったです。また、作者当ての類も大変楽しく読ませていただきました。

最終候補作はどれも素晴らしく、いま私が言うと嫌味になりそうなのですが、本当に誰が賞を取っても不思議ではなかったと思います。感想のブログには嘘はなく、アンソロジーとして物質化することは大変にめでたいことだと思います。

この10作のうちの1作に並べさせていただいただけでも本当に光栄でした。また糸川乃衣さん、牧野大寧さん、おめでとうございました。

 

ネットでの創作をはじめたきっかけは、ケモのアンソロジーのまえがきにも書いたのですが、「ぼくらベアベアーズ」の2次創作です。6年前ですね。

これまで現実やネットを介してたくさんに方に読んで支えていただきました。受賞をきっかけにして、この過去の作品が好き、と色々な方が言ってくださるのを見て、なんだかとっても嬉しかったです。これまで賞歴のなかった同人作家には望外の喜びです。

これからも頑張りますので、見守っていただけますと幸いです。

 

さて、最後に蛇足を…

・明確なミスが何点かあります。女子選手の名前はリギンズではなくリギンです。そしてアントワープ五輪の女子3m飛板飛込は8月29日でした。手紙の日付間違ってるやんけ! 書籍収録時には修正します…歴史小説のような顔をしているくせに凄まじい考証漏れが…。

・最初は『幽霊と未亡人』みたいなノリで、野球好きのおじさんの幽霊が寄宿学校に…という話を書こうと思ったのです。初稿は校庭に突然現れておじさんが魔球を教えてくれる展開だったのですが、不審者すぎると思ってあの形になりました。

・ダーシーも死ぬ想定だったけど書いてるうちになんかちゃうなと思って生存エンドに。

・野球ネタにしたのは下鴨神社納涼古本まつりで買った藤本茂生『子どもたちのフロンティア―独立建国期のアメリカ文化史』(ミネルヴァ書房)という本がきっかけです。あの日一緒に回ってくださったストレンジフィクションズの織戸久貴さんと紙月真魚さんに感謝。

それでは、ごめんあそばせ……

 

かコ3(第3回かぐやSFコンテスト)最終候補作全作感想

まえがき

◎これは何?

第3回かぐやSFコンテストの最終候補の全作に関する感想です。

◎第3回かぐやSFコンテスト(以下かコ)って?

4000字でやる匿名のやつ(注:私はBFCのことも「6枚でやるやつ」と呼んでいます)。私が最終選考に残っているため10分の1の確率で私の作品が読める。結果発表前に著者がバレたり投票を不正に誘導しようとすると失格になる。

◎なんでわざわざ全作感想を?

いまのところ「公開直後に速読して確認したが男性器が出てくる作品はひとつもなかった」「この作品がエッチだった」みたいなありとあらゆる作品をエッチな視点で読もうとする私のような埒外以外には絶対に投票の誘導に寄与しない情報(※かコはSFのコンテストなのでエッチだからという理由で投票をするやつはまずいない)しか出していないのですが、そろそろここらで全作にまんべんなく感想を書いておかないといけない気がした。全作にまんべんなく感想を言うのはOKだそうなので、頑張って書く。王様の耳はロバの耳~!!

◎目指すところ

絶対に誰の投票の参考にもならないであろう、完全に主観的であり毒にも薬にもならない文章を目指して書きます。ほんとうに雑な感想なので著者の皆様には申し訳ないという気持ちしかありません。あたしを失格にしてください……(両手首を合わせ、掲げる)

注意

・なるべく配慮をしたつもりなのですが、それでもなおネタバレがあると思います。

・著者の皆さまは「こ、こいつ、生かしちゃおけん!」みたいになるかもしれませんので、名前を出してやれるようになってからお読みになったほうがいいと思います(かぐやSNSファイトクラブ、開幕……)

本題

「叫び」

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馬と人間の不均等な関係性に焦点を当てた作品、とでも要約しましょうか。世界中で馬が聞いたこともない叫びを上げはじめてからの出来事と、馬たちからのメッセージが交互に綴られます。なぜ「未来のスポーツ」なのかは、お読みいただければわかるはず。

ソリッドで重苦しい調子の語りがラストでイリュージョンのように加速していく手つきが見事です。語り手が誰なのか、ということだけちょっと気になりました(最後に「私」が出てくるけれど、そこまではどうかしら)。

馬が好きな人に読んでほしい作品。私は皆川博子『聖餐城』(馬と人の関わりについての描写がよい。あと皆川博子は馬糞の描写をなぜか一作に一回は入れている)とか古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』なんかを思い出しました。

 

ベントラ、ボール、ベントラ

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へ、変な話……と思って読んでいるとこれが「ドッジボール」の変化したやつという情報が開示される。んなわけあるかいな。めっちゃ笑ってしまいました。

ドッジボール」がどう変化しているかというと、ボールは何でもよくて(誰かの家の犬か誰かのヘアクリップなど)、「内野」にいるプレイヤーたちはそれを特定するところから始めないといけない。

田舎の平和な遊びのようにも見えるけれど、戦争の影がちらついていたり、そもそも「内野」が巻き込まれから始まるあたりがどことなく陰謀論っぽいというか……Ingressの田舎のやつみたいな?(ポータル守ったりはしないけど)。のどかさと不穏さの共存が魅力ですね。

小川哲(結婚して震撼が走った)『ゲームの王国』の最初のほうが好きならこれもきっとお好きでしょう。

 

「勝ち負けのあるところ」

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女子プロレスの興行の最中に地球へ宇宙人がやってきてしまう。ムキムキの六本腕を持つ宇宙人(3m)たちは、なぜかステゴロを要求しているらしい。格闘家たちが討ち死にするなか、なぜか弱小レスラーの〈私〉とサラにお呼びがかかり……

自分のプロレスラーとしてのキャラ付けによって女性のステレオタイプが強化されてしまうことに対する嫌悪感や、性一致手術を受けたサラに対する仕打ちなどは、女子プロレスを知らない私も日常のいろいろなことを思い出すところでした。そういった要素が見事に昇華されるラストが素敵です。

合わせて絶対にみてほしい映画:宇宙人とステゴロで殴り合う作品と言えば? そう、映画版『バトルシップ』ですね。あとロバート・アルドリッチカルフォルニア・ドールズ』は本当に名作だから観てほしい。

 

「プシュケーの海」

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プシュケーとは息、魂もしくはいのちなどを指す言葉だそうです(いまwikiで見た)。下半身を失った元競泳選手ツグミは、特殊なインプラントでイルカから身体感覚を受け取り、疑似的に泳いでいるという状態を体験できるようになるが……というお話。

ここまでどちらかと言えば奇想寄りの作品ばかりを続けてご紹介しましたが、こちらは科学的説明がイメージの補強に用いられている作品。静謐な雰囲気のなか、短く刈り込まれたセリフのなかにツグミの激情を感じますし、ラストもとても印象的です。ちなみに、クリッキスはイルカが出すクリック音だそうです。

合わせて読みたい:『マルドゥック・スクランブル』(この流れでエッチなイルカが出てくるからって理由で紹介することある?)

 

「マジック・ボール」

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女子寄宿学校でベースボール好きのはねっかえり少女・ダーシーと出会ったイライザは、自分の投げたボールが消えることに悩んでいた。やがてイライザは家庭の事情で学校を出るが、南北戦争(恐らく?)がはじまってしまい……というお話。

すっとぼけているのがそのまま魅力、という小説でした。ユーモア小説のような始まり方をしたかと思えば、ダーシーが男装して出征するくだりのセリフに思わぬ激情があったりもします。この展開で死なないことあるんだと私も思いました(笹帽子さんのブログ参照)

合わせて読みたい(そろそろこのコーナーしんどくなってきたんだけど……):川原泉笑う大天使」「甲子園の空に笑え!」、石川博品後宮楽園球場 ハレムボール・ベースボール」

 

「月はさまよう銀の小石」

virtualgorillaplus.comエッチだと思った最終候補作品その①(お父さんが鳩をボールで撃ち落とすところに萌えました←それってエッチなんですか?)。ネアンデルタール人の生き残りにしてピッチャーだった父と息子(語り手)のお話です。

とにかく情感に訴えかけるものがあり、エモ勝ち(相撲の決まり手)です。「自分ではない誰か」とはおそらく整形手術のことでしょうか。強いて気になる点を挙げるとすれば、そのボールって成層圏を突き抜けるときに燃えませんか? という一点なのですが、まあ早かったらどうにかなるのかな……(「マジック・ボール」にもそんなことが書いてありましたし……)。

合わせて読みたい:『僕のヒーローアカデミア(エッチな父繋がり!?)

 

「城南小学校運動会午後の部『マルチバース借り物競走』」

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多元宇宙上の歴史を改変して「いまないもの」を取り出してくるという借り物競争、という荒唐無稽な小説。

こんなんもう考えたもん勝ちでしょう、という設定はもとより書きぶりがいきいきしていて素晴らしい。実況(なんで小学校の運動会にこんな専門的な実況者がいるんだ…)の挟む雑学にいちいち「そんなんあるんすか!?」となる。お父さんも博学だし……学術都市とかの小学校なんかな……あと、色々な方が指摘されていますが「かぐや」性(無茶なものを持ってこさせるやつ)も回収してるのが小憎いですね。

合わせて読みたいものは思い浮かばないのですが、この作品を読んだ直後に偶然Twitter「籠を背負った先生がマツケンサンバを踊りながらやる玉入れ」というのを見ました。そんなんアリか? 私もやりたいのですが……

 

「月面ジャンプ」

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今年のオリンピックは国民全員参加による「月面ジャンプ」一種目しかない。それはきょう地球が「ロッシュ限界」を超えて接近してきて、月が壊れてしまうせいだった……というお話。

どこまであらすじを紹介したものか……というのは由緒正しいショートショートの雰囲気を感じるからなのですが。こちらも科学的説明をイメージの補強に使っている作品。子どもの語りのすき間から末期的な状況が見え隠れするというか、ひとつ読み解くたびに震え上がるような仕掛けがあります。喜劇と悲哀の相混じるこの感触はショートショートの醍醐味でしょう。

合わせてみてほしい映画:『ドント・ルック・アップ』(惑星メチャクチャつながりで……)

 

「あの星が見えているか」

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身体矯正が進んでいく世界で、手術をしていない眼球で遠くのものを見ることを競う「競視」のお話。

身体矯正やスポンサーの話など未来の(あるいはスポーツがそもそも持っている)世知辛さがきめ細やかに描かれているがゆえに、「先生」との記憶や普段温存している目を解放したときの段落が鮮やかに輝いて見える。

状況とドラマとイメージのバランスがよく取れていて、見事なウデマエを感じました。視力検査じゃん……!?というところからその読後感に至れるのだからすごいことですよ。

私が思い出したもの:呪術廻戦のずっと目を隠してる先生

「歴史的な日」

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猛暑や雹などの異常気象で屋外体育がなくなったことで子供たちの体力が低下し、校庭のトラック上にテントを張った。施工を担当した語り手はテント完成記念の式典に呼ばれる。

労働者ものとしてとてもいいし(ちょっと斜に構えてる感じなんだけどつい子どもを応援しちゃうあたり)、この設定にはかなり「ありそう」感を感じる。私もここ数年夏って暑すぎてあんまり外に出ていないですし、気候の変化をひしひしと感じています。地に足がついていて淀みがなく、素敵でした。エッチだと思った最終候補作品その②です(ついつい応援しちゃうところに萌えました←本当にそれはエッチという表現が適切ですか?)

思い出した映画:『アントマン』(作業服を着ているポール・ラッドが出てくるから)

むすびに

いかがでしたか? まあこんなんいかがでしたかもクソもないわよね。いや、これ以上何も用意せずSNSをやっていたら本当に失格になるんじゃないかなって思って書いただけなんです……まんべんなく感想を書いたら許されが発生するって聞いたから……

ここまでお読みくださった皆さん、私が何に投票したかも私がどれを書いたかも多分わからないですよね。わからないですよね? そうと言ってください。……わかってしまいましたか? そう……ならば、あたしを失格にしてください……。

 

 

 

 

20230726~

0726

ひさしぶりに行くか~と思って、中崎町のGallery yolchaで「まちのひ朗読舎(犬街ラジオのリアルイベント)」に行く。オープンマイク用に頑張って電車で日記を書いた。オープニングから座ってたのって初めてだったかも。井上さんと谷脇さんに大阪/京都SFアンソロジーのカバーの色校を見せてもらう。こんなんなってんの! と言ってたら谷脇さんが完全に新人研修モードで本の仕組みを教えてくださった。

オープンマイクでこの日記を読んだら北野さんから開口一番「これは、本当にあったことなんですか」とコメントをいただいたのが面白かった。帰りの電車で近所の卵激安情報やなるべく火を使わない料理について話す。

私がこの前発見したのは「米茄子を皮をむいてレンチンするとうまい」。

0727

書評に必要な本が家にないことが判明して慌てて買いに行ったのだが要らん本を結構買ってしまった。小川哲のインタビューが載った「本の雑誌」、新刊棚の前で座って読んでる写真が最高でした。

流石に仕事の進捗がやばいということになり、お昼から友人と作業。MUJI CAFEの激烈な値上げを知らずに入ってしまって泣いた。仕事は結構バリバリ進んだけど私の個人の仕事が終わらない。そのあともう一人のギャルが合流してギャルオケの作業をしたけど私だけ残業をしていました。

0728

会議の結果もう一回集まったほうがいいということになり、友人と喫茶店で作業。バリバリ進んだは進んだ。夜に別の作業をするつもりが、カフェインの過剰摂取と寝不足が効いてダウンしてしまい、だらだらしていた。

0729

レビューの本を読んで、夜は東京からきた友人と合流。友人は携帯を落として遅れてきた上に、宿泊に必要なものをすべて忘却しており、薬局に連れて行ってあげた。でも私も四条のでかい薬局のレジが免税専用とそれ以外で分かれていることを忘れていた。

結構遅い時間になってしまい、どこでもてなしたものかと考え、てんや→ノスタルジアに連れていく。

0730

朝から電車に乗って兵庫に。ヴィオラのレッスン2回目。練習の方法を目の前で教えてもらうということで、ほとんどおしゃべり。とりあえずテールピースを交換して弦を張り替えることに。そして人生で初めてエチュードをやることになった(クロイツェル)。次回は楽器弾いてもらうからね! と言われる。こわい。

こんなに暑くなかったら三宮とかに足をのばしてもよかったんだけど、今日はそれをやると死ぬ気がした。マクドでお昼を食べて、京都に帰って別のマクドで作業。お夕飯は王将の麻婆豆腐が食べたいなと思ったけど混んでたので違う中華料理屋に入った。おいしかったもののやっぱり王将の麻婆豆腐が食べたかったので脳内で「イミテイション・ゴールド」が流れる。

そのあとさっきまで書評をやっていた。やれやれ、なんて一日だ。

20230718

7月18日 火曜日 晴

 

部屋干ししかできないアパートに住んでいるのに2週間分の洗濯物を溜めてしまった私は、一度も使っていない近所のコインランドリーに行こうと思い立った。

イケアの青い袋に洗濯物を詰め込んで、自転車に乗った。15分後には仕事を始めるべき時間になってしまうので、急いでいた。信じられないくらい暑い日だった。

コインランドリーの自動ドアは押すタイプのやつだった。何度も押してみたけれど、開かなかった。カポ……カポ……とスイッチがむなしく音を立てる。

中におじいさんとおばあさんがいた。コインランドリーのオーナー夫婦が鍵をかけて点検でもしているのだろうか、と思っているとおじいさんのほうが私に気づいて、ドアを手で開けてくれた。

「その洗濯物やったら中型のやつやんな? いま、いっぱいなんや」

おじいさんとおばあさんは毛布の乗ったカートを押して、まだ動いている小型の洗濯乾燥機の前まで押した。

「にいちゃん、これな、空いたら入れといてくれへんか。たのむわ」

どういうこと? と思っていると、おじいさんとおばあさんはドアを手で開けて、外に止められた車に乗って、どこかに行ってしまった。

私はひとりで取り残された。

わけがわからなかった。入れといてくれへんかって、お金入れて動かせってこと? お金渡してくれなきゃ無理じゃない?

そうこうしているうちに中型の洗濯乾燥機がひとつ停止した。しばらく待っても持ち主がやってこなかったので、私は中身をかごに移して、自分の洗濯物を入れた。

プリペイドカードに課金をしていると、ヤンキーっぽい夫婦が入ってきて、さっき私が引きずりだした洗濯機の前で話しはじめた。

「うわ、出されてる」「このままもう1回乾燥させよ思ってたのに」

私は横目で2人を伺った。夫婦も私を見ている。それも仕方がないことだった。どう考えても私が下手人だ。

「どうする?」「空いてる小型のやつに移すか」

私はそのまま洗濯機を起動せずに、そこを逃げた。とにかく余計なやり取りが発生してほしくなかった。

夫婦は車で来ていた。踏切を挟んで斜向かいに、潰れたパチンコ屋がある。私はその柱の陰に隠れて、車が去るのを待った。

全てが面倒だった。もう全部あそこに置いていこうかな、と思った。服なんてまた買ったらいい。古着屋とかで。

夫婦が去った。汗だくになりながらコインランドリーに戻ると、おじいさんとおばあさんがさっきのヤンキー夫婦が動かした洗濯乾燥機の前でおろおろしていた。

「にいちゃん、誰か割り込まはったんか? ここ」

すいません、お金取りに行ってたんで……とか何とか言い訳をすると、おじいさんとおばあさんはしゃあないなあ、と言って車へ戻っていった。私は自分の洗濯物を入れた洗濯乾燥機を動かして家に戻った。

ひどい目にあった。しみじみとそう思った私は、学生時代からの友人しかフォローしていないTwitterのアカウントでツイートをしたためた。

 

仕事の前にコインランドリーに行くかと思ったら地元の面倒くさいコインランドリー争奪戦に巻き込まれて予定時刻に出社できなかったんだけどなんなん?????????????

 

 

 

1時間仕事をして、財布と携帯を持ってコインランドリーに戻ると、おじいさんとおばあさんも、ヤンキー夫婦もいなくて、私はほっとした。乾いていなかったら追加で乾燥機を回そうと思っていたが、開けてみたらその必要はなさそうだった。私はイケアの青い袋に洗濯物を詰めてそれを抱え、家に戻った。

 

異変に気づいたのは1時間後だった。

携帯がないのである。さっきまでゴロゴロしていた布団をめくってみても、ベッドの下を覗いてみても、見当たらない。

まさか、と思って探してみると、財布もない。

コインランドリーに持っていったところまでは覚えている。そこから持ち帰って、どこに置いたのだったか。

いや……そもそも持ち帰ったのだろうか。青い袋の中に財布を入れて出したという記憶が、そもそもない。

自転車に乗ってコインランドリーへ戻ってみたけれど、私が作業をしていた机の上には何もなかった。

パソコンのチャットで上司に事情を伝え、会議を延期してもらった。心配する上司をよそに、私は落ち着き払っていた。

どうすればいいかはわかっていた。ここ数年で、財布を3回、通帳を1回、携帯を2回、定期券を1回警察で引き取っている。この数字が正しいのかも怪しい。つまり数え切れないほど紛失している。私は落とし物のプロだった。

私は警察に行き、落とし物の窓口で特徴を伝えた。落とし物のプロなのに書類には山のような書き漏らしがあり、全てその場で書き直しを命じられた。

照会してもらっている間に壁の掲示物を見ていたら、ひとつの掲示が目に留まった。知り合いの知り合い、くらいの失踪を伝える紙。私はその結末を偶然知ってしまった。書くことはできない。まだ紙を町中で見かける。

やがて高野の交番に届け出があったことを知らされ、引き取りに行った。

携帯と財布を取りに来たことを告げると、窓口にいた若い警察官は笑いを噛み殺しながら財布を渡してきた。まあ財布と携帯をセットで忘れるようなやつはバカにされても仕方が無いだろう、と思ったが別のことに思い当たった。

財布に、放送大学の学生証を入れていた。放送大学の学生証は写真の規定がないので、誕生日に取ってもらった浮かれた写真を入れていた。後輩がダイソーで買ってきた魔法少女の変身スティックを構えている写真だ。

でも、やっぱりあの警官は単に無礼なだけだったかもしれない。小銭を出した拍子に劣化した皮はパラパラ落ちた時、うわ汚な、と言った気がしたから。

中身は多分無事だった。元々財布に何円入っていたかなんて覚えていない。

私は交差点の向かいのイズミヤでよわない檸檬堂とおにぎりを買って、家に帰った。私はさっき偏見丸出しのツイートをしたことも忘れて、地元の人々のあたたかさに感謝した。

 

-20230723

◎5月の末まで同人誌やその発送以外のことができず、そこからようやく市民オーケストラの練習に参加できるようになった。本番は7月22日で、とどのつまりは1ヶ月半しか準備ができなかった。

そもそも私は市民オーケストラにうんざりしてしたため、市民オーケストラより楽しいアクティビティがいくらでもあるだろうと思って合唱を始めたくらいなので、全然そういう、この夏に市民オーケストラに乗るようなつもりで予定を組んでいなかった。……という言い訳をすることもできるけど、そういう問題ではなく、私の技術が足りていないというシンプルすぎる理由で弾けなかった。始終どうしよう……と思っていた。

まあどうしようもなかったので弾けないところがたくさんあったけど、後先を考えずに京響の先生のレッスンに通ってみたり、最後の1週間だけでも頑張るかと思って毎日カラオケに篭もってみたりした。案外それが楽しかったので、ヴィオラを定期的に習おうかなという気持ちになった。

楽器を売っぱらおうと思っていた4月からしたら信じられない気持ちの上向きようだと思う。市民オーケストラを今後も続けるかどうかはちょっとわからない。でも市民オーケストラ以上に楽しい趣味って何だ……小説を書くこと……?(10年以上続いた趣味が楽器と小説しかない人間特有の極端な思考)

◎さなコン3に出した小説が1次選考を通っていた。

字数を削るときにうっかり同じ人物のセリフが続くようになってしまった箇所とか、pixiv小説が太字やイタリック体を使えない仕様なのを知らずにそういうのを駆使して書いて、投稿画面に向かって「小説投稿サイトを名乗るのやめろ!!」と叫んだこととか、思い出です。さすがに2次は通らんと思う。