わくわく就活日記

2月初頭

 院試に合格する。数日前にDeadbyDaylightをはじめ、メチャクチャハマっていたので、これであと1年は心置きなくゲームに2次創作に何でもできるぜと思った記憶がある。


2月上旬

 音楽史のレポートの点数が足りずに留年する。


2月中旬

 リクナビマイナビに登録して性格診断を受け、「あなたが最も重視する価値観→快楽・芸術・報酬」「変革性以外全部平均スコア以下」などといった結果を出す。


2月後半

 資格のみを目当てにしてメガバンクに入構する友人、ベンチャー系学習塾に流れで入社した先輩、不動産会社で心身の調子を崩し退職した先輩などの話を聞き、就活に対する心構えをする。


3月初頭

 学校主催の合説に行く。

 就活カバンや腕時計を買うのが面倒だったので愛用のディッキーズのリュックを背負っていき、セブンイレブンで1番小さいメモとジェットストリームを買ったものの、途中でジェットストリームをなくしたので、筆箱に入っていたミリペンでメモを取る(めっちゃ手が汚れた)。

色々なところに行き、「私は勢いのある民間企業に向いておりません」「説明のスライドにいらすとやと創英角ポップ体を使っているところしか受けたくありません」という気持ちになる。

 結局2日目の午後で飽きてしまい3日目をサボる。


3月中旬

 はじめての企業説明会に行く。

 Amazonで1番安かった就活カバンと、Amazonで1番安かった腕時計を着ける。受付証みたいなのを下宿の近くのセブンイレブンで刷ったはいいけどなぜかクリアファイルを持っていなかったので、クリアファイルを会場近くのセブンイレブンで買っていった。遅刻しそうになった。

 このころの私はメチャクチャにメモを取っていた。メモを取るのが好きだったから以上の理由は特にないんだけど、メチャクチャに取っていた。

 腕時計の液晶保護フィルムを剥がしていないことに気付いたのはその最中だった。それだけでなく、なぜか逆さまだった。私は黙って机の下に手を入れて、フィルムを剥がし、正しい位置に付け替えた。

 説明会と座談会の二部形式なので、はじめての座談会も経験した。マイナビで聞いたことのあるような質問が飛び交っていた。早く帰りたくなった。そういう気持ちが私を椅子に浅く座らせたのかもしれない。座談会が終わり、座ったままお辞儀をした瞬間、私は床に転倒した。何が起こったのかわからなかった。大丈夫ですか? と隣の就活生が笑いながら声を掛けてきた。

 同じビルにムレスナティーと提携しているカフェがあり、私はそこで紅茶飲み放題を頼み、上記のことをTwitterにおもしろおかしく書いた。すると、長年FF関係だったがあまり交流はなかった方から、突然リプライが飛んできた。

 ──こんにちは。あまり定型就活に向いておられないようにお見受けするのですが、コネなどはないのでしょうか?

 確かこんな感じだった。(その節はご心配どうもありがとうございました。ご心配の通り全然向いてませんでしたね)


3月下旬

 はやくも面倒になってきて、エントリーシート持参(ただし締切日までに郵送してくれたらよし──ということになっていた)の説明会にエントリーシートを持っていかなかったりした。

 私はチープな快楽を覚えた。つまり、説明会に行って、人事が「楽にしてください」と言ったら思い切り楽にし、「飲み物を飲んでいいですよ」と言われればごくごく飲んだ。

 たまたま新発売だったからという理由で、いろはすメロンソーダ味を持っていたことがあった。「飲み物を出していただいて結構です」と言われたので、この上なく慎重に開けて、ゆっくりと飲んだ。


3月下旬

 エントリーシートを〆切当日に書いては死にそうになる、ということを繰り返していた。

 〆切15分前に「写真を貼り付けて自己PR!」の欄に気付いてヤケクソになり、メンタルコンディショニング機能に問題がある人間4人でがっつり3年組んだ弦楽四重奏グループの写真を貼った。

 大きい郵便局だと17時までに速達を出せば翌日東京に着く、大学の近くなら16時、とかそういうことばかりを覚えた。

 

4月〜5月

 エントリーシートで落ちまくったりIT系企業の一次面接で「IT技術で世界が壊れていく様が見たい」みたいなことを言って落ちたりしていたら5月上旬で残弾がなくなった。これがどのくらい絶望的なのか私はわからないのだが、友人に「どんなに絶望的な状況でも毎日楽しそうに生きてて見習わなきゃな」言われるくらい私はのほほんと暮らしていた。

 なぜなら同人活動のほうでジェレミー・レナー全レビューをやることになったからだ。やることになった、と軽く書いてはいるが、私はその時点で生涯で観た映画が200本もないのではないかという状態だったので、結構な英断だったと思う。そういうわけで映画の勉強をしようということになり、1日1本から2本くらい映画を観る生活をしていた。

 将来のことが何もわからない状態で、毎日映画だけ観て暮らしていて、その時期だけ記憶に現実感がない。就活のことはあまり考えていなかったように思う。


5月下旬〜6月

 JOBRASSやirootsから来たオファーで比較的マシそうなところを受けたりしていた。最終面接で落ちてしまったのがひとつ、一次面接で落ちてしまったのがひとつ、そんな感じだったと思う。

 並行してWantedlyベンチャー系を見ていた。最初に受けたところでは適性検査テスト0点という見事な落ち方をした。

 あと5/26からはじまったOverwatchのフリプで見事に沼に落ち、6月だけで76時間やっていた。漠然と院試をもう一度受けるべきかもしれないと思うようになる。おおむねのところ友人と寿司を食べに行ったり映画を見て桃を食べたりと楽しく暮らしていましたけれども。

 

6月後半〜

 Offerboxから来たオファーでひとつ面白そうなのがあった。深く考えずに受けに行った。大概就活に対してヤケクソになっていたので私服指定ならマジで私服で行き、面接でも同人のことを話すようになっていたのだが、それがウケたのか何なのか内定をもらった。

 駅のユニクロでポロシャツを買って、近くのエクセルシオールで面接までの時間を潰して、トイレで着替えて会場に行くというのを2回くらい繰り返したけど、これで本当に社会に出れるのでしょうか。


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 総評特にないんですけど、まあ、やべー奴がやべーままでも採ってくれるやべー企業が世の中にはあったというお話です。

 あの時期、あれこれと心配やアドバイスをしてくれたり、どうしても就活をしようとしない私と遊んでくれたりした全ての友人たちに、心から感謝しています。