20211103 リボで貢ぐ

 夜を徹してこどものおもちゃを一気読みし、移動中に寝る。

 さあ夕飯だと思った数分後に愉快なサザエさん状態になった私は、まあクレカもPayPayもあるのだし、そのどちらかは使える店に行こう、と思っていたのだが、いま私のいる土地に昔住んでいたフォロワーさんが教えてくれた店が、まさかの現金のみ。そのとき暴力と破滅の運び手が取った行動は──

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 まさかのリボ払いデビュー。

 セブン銀行から吐き出された3000円を握りしめながら、オムファタルに貢ぐでもなく、本質的で高額なものを買うでもなく、ソシャゲ課金でもなく、現地の美味しいもののためにリボ払いでクレカキャッシングに手を染める人生って何なんだろう……としみじみ思いました。

 現地のおいしいものは、リボ払いの味がしました。 

 

 リボ払いといえば未だに思い出すことがあって。

 あれは、私が大学の5回生か6回生をしていたみぎりのことでございました。当時私は大学に数ある文芸サークルのひとつに所属しておりました。週に2回会議や読書会などを行う例会が行われ、アフターで近所の食事店に行くのが常でございました。

 その日もそうだったのでしょう。

 私は後輩たち数人とともに、大学近くのタイカレー店におりました。テーブルの上にナンプラー漬けの唐辛子が置いてあり、それをご飯に掛けるとたいそう美味しいため、私は密かにそこをナンプラー屋さんと呼んでおりました。

 さて、店にはわたしたちの他に、男子学生数人のグループがおりました。チェックシャツや色褪せたパーカー、そういう服を着た、素朴な京都の大学生という雰囲気でした。

 私たちはナンプラーを食べながら談笑しておりましたが、狭い店内のこと、隣のテーブルの会話が時折聞こえてきます。

「親に内緒で……リボ払いで……」

 ほうほう。なにか欲しいゲームやらパソコンやらを買ってしまったとか、そういう話だと思って、私は談笑を続けました。が、またしても会話が聞こえてきます。

「貢いじゃって……」

 今なんて?

 テーブルにカレーが届き、私たちは誰ともなく喋るのをやめ、食べはじめました。否応なしに話が聞こえてくる状態です。その詳細はもうあまり覚えていませんが、親に内緒で女にバッグとかを貢ぎまくってやばいのだが、明日沖縄へ行くみたいな話だったと記憶しています。沖縄にいるのが女なのか親なのかはもうわかりませんが、学生たちは、おれ…おまえに金貸すよ! おれもおれも! 助けになるよ! みたいな感じになって解散していきました。

 残された私たちは誰ともなくさっき聞いた話について話をしました。

「ねえ、いま……リボ払いで女に貢いだ話してたよね……」「してましたね……」「何か……何? どういうこと?」「わかんないですね……」「でも、よかったよね……なんか……励ましあっててさ……」「リボで貢ぐ……」

 私のカバンにはちょうど、例会の度に手から手へと渡るサークル内交換日記的なノートがありました。それをテーブルに出すと、後輩は太字でリボで貢ぐ。とのみ、ボールペンを何度も往復して、太い文字で書きました。

 その後、あの男の子たちはどうなったのでしょうか。ことある毎に思い出す記憶です。

 

 というブログを、お風呂で犬街ラジオを聴きながら書く。におってそういう意味だったんだ。カイツブリって、知ったかぶりカイツブリしか知らない……