「灰は灰へ、塵は塵へ」に関する弁明

🐂前書き

フォロワーが書いたオリジナル小説を基にしたエッチな二次創作を本人に送りつけていいイベントが開催!!???!!?
○枯木さんとは第2回かコの時に「チャイコフスキーの亀頭」を面白いと言ってくれて、Twitterでもゆるやかな交流がある。
○フォロワーの小説を読んでエッチなBL二次創作を書いて本人に送りつけていいイベントが開催されることはなかなかないと思ったので、かぐプラに課金をして先行公開期間中に読んだ。
○ら、原作の時点でエッチだったのでどうしようと思った。

🐲枯木枕さん「となりあう呼吸」について

前提:
生き別れ→エッチ!
リンチ→エッチ!
ソウルメイトが沐浴を通じて1つになる→エッチ!(「君の名前で僕を呼んで」みたいで)
命運が分かれるエンド→エッチ!(「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」みたいで)
みたいなことは言っているけど、小説自体への感想はあんまり書いてこなかった。
○とはいえスペースなどを聞いているうちに「私がこれ以上付け足すことある?」の気持ちになっている。
○ひとつひとつの文が凄く丁寧に作られており、一見とっかかりにくそうな文章ではあるけれど、要所要所でエモのツボが的確に押さえてあるので内容がスッと入ってくる。例えば最初の部分からマヤとモネについて互いが互いにとっての光であることが提示され、これはもちろん劇場に入ってからの展開に効いている。そして同化してしまうというのはある意味で光を失うことでもあったということかもしれず、半身を失って「はじめて踊る」/光の中に再び踏み出すという流れを導いている。また「じぶんとそれ以外の境界にもなれて」という一文もあとに繋がる布石として機能していて、二人の同化=対照となる光の喪失→舞台と現実の境界を失うという構図がこの話のプロット上の肝だと思う。湖のシーンから現実の湖へシームレスに変わる箇所とかもそうかも。
 途中の浮浪者が出てくる劇の部分がパトリック・ジュースキント(あるいはトム・ティクヴァの映画版?)『香水』のラストから引いていると聞いて、なるほどと思った。えげつない魅力とは傷付け食べられることであるという話なので、しっくりハマっている引用。
 湖のシーンでふたりが「やろう」と決意した演目というのは実のところ『悪童日記』なのではなかろうかと思っていて、というのはその後の異なる場所にいる「モネたち」の語りがひと段落のなかで継ぎ目なく現れる表現がちょっと『悪童日記』を想起させるから。『悪童日記』の邪悪ツインズにはこんなに別の場所で別のことをしているシーンってなかった気もするけど……
 しかし「モネたち」の語りには『悪童日記』みたいなちびっこギャング(?)部分はほぼ存在せず、次の場面では同化がすでにほどけている(片方は脚を壊して踊れなくなってギャングの下っ端として消耗しており、片方は見られることへの暴力性に震えながら踊り子をしている)。光を失ったまま現実と同化した舞台は夢の装置ではなく工場と同列にある搾取の現場となり、そのままカタストロフに向かう。
○脚壊してるほうのモネが脚壊した理由って踊ってる最中にステップを強く踏みすぎてしまったからなのかもしれない。
○街の様子はそこはかとなく社会主義というか高度経済成長期の団地というかな感じがする。団地夫ものとか書いてもよかったかもしれない。

🚰投稿作「水底へ」について

○せっかくの企画なので、記念にエッチな二次創作を読んでもらいたいと思ったし、この企画を私の目に見える場所で開催したことを後悔するくらいエッチな二次創作を書こうと思った(テロリスト?)

○公募のエッチなやつがめっちゃいっぱい集まったためレッドオーシャンだったらしい。枯木さんにどうしてもエロ小説を読ませたいやつがこの世に17人(推定)も……? 私のよりエロいやつもあったらしいのでエロ小説家の名が廃りました。
○原作がエッチなのにエッチな小説を書くの難しいな…と思っていたら、一行目からSMの話になった。
○その時ちょうどNU:ユニバースという18禁BLソシャゲをやっていて、片方が男騎士になった。

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○SMシーンがいつまでも終わらない上に、「自分の声帯で夢アテレコしながらマスターベーションをする」シーンまで入ってしまった。
○喉が入れ替わる、という話は、「何本もの手が痣をつける」描写を、「ほんとうに自律して動く身元不明の腕」だと思って読んでいたことから(他の方のスペースを聞いていて、性暴力の隠喩的表現だったのでは?と思った)
○舞台を出そうとしたときに、湖が出てくるオペラといえばドヴォルザーク《ルサルカ》だなと思って出した。演出・装置を猫写するために参照したのはパリ旅行でオペラ座行って観たロバート・カーセン演出の《ルサルカ》。ただしこれは演出プランの三分の一も説明していないし、装置も展開に沿うようにいじりました。

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○声で硝子を割るというのはびっくり人間がやるやつ。ただ、人間がやるなら女性の方が有利かも。男声の実声で割れるかはかなり微妙かもしれない。
○語り手の声は悪魔のバリトンボイス。バリトン歌手はエッチな人が多いらしいです(声楽科出の友人曰く)。
○公開作に比べてかなり「なんとなく読めるけど物語として読めない」度が高く、落選作が続々公開されて色々読んだとき本当に「なぜ通った…?」と思った。

🦁かぐプラコーディネーター井上さんからのコメント。

○SMがただ好きなのか、それとも他に理由があるのかよくわからない。この世界観でSMしたら死ぬのでは…。そもそも何でこんなに頑張って歌を教えてあげてるのかがわからない。
○全部本当にそのとおりだと思いました。
○枯木さんに「暴破運さんならもっと攻められる」という伝言をいただいて宇宙猫になった。(どの要素を? SM…? と悩んだ)

💍公開作「灰は灰へ、塵は塵へ」

まとめ:
「書いたらこうなっちゃった」(投稿版)→「書き直したらこうなっちゃった」(改稿版初稿)→指摘されたポイントをどうにかするためシーンごと消滅させて書き直すことを繰り返す→アロイスがどんどん意志力よわよわパーソンになってしまい私がエドワード・エルリック化する(立(中略)前(中略)あんたには立派な足(後略))。

https://virtualgorillaplus.com/stories/haihahaihe_chirihachirihe/

○井上さんのアドバイスを元に1から書き直したもの。物語として読めるようになったけど14000字に膨れ、そして大量の矛盾点・疑問点が井上さんから返ってきて泣きました。
井上さんがスフィンクスに見えた。改稿するたびに「脳が寝ているのでしょうか?」みたいな矛盾だらけの原稿を出す私が100%悪い。でもこんなに大変な思いをするとは思っていなかった。
○公募はもうコリゴリだよ〜!と思ったけど結果を待つということが心の健康につながるのでこれからもダラダラ続けてしまうと思う。
○投稿版は我ながらなんとも言えないオチだったけどこっちは『うしおととら』みたいになった気がする。そうか?
○オペラの《ルサルカ》が出てくる意義を出そうと思ったりなんだりしてるうちにこんな話になってしまった。チェコの隣国って、要は東ドイツ…? と思って、東ドイツに物語の舞台を置いた。ルサルカ、という言葉の入った部分まで入れるか悩んで、入れるのだったらここまでやらなければ、と思った。実在のオペラを構造の深いところにはめ込んだことで舞台や動機が引きずり出されてきたような感覚。
○とはいえこんなにチェコオペラばっかりやる劇場が東ドイツにあるわけがないと思うけど。(チェコ国内ですらなかったろうと想像)
東ドイツのことよくわからなくて、「東ドイツ シュタージ 暗殺」「東ドイツ 暴走族」みたいな茫漠としたワードで検索していた。
東ドイツに暴走族(Motorradとかそんな単語らしい)がいたのかよくわからない。一作だけ東ドイツの映画で暴走族ものというかバイクで集団で車を襲う描写から始まるものがあるらしい(the baldheaded gang)。最初だけ見たけどなんか……もさい……
〇シュタージ(東ドイツの秘密警察)がそんなことをしていたのかよくわからない。眉唾もののネット記事とかは出てきたけど……
○アロイスという名前にしたのは萩尾望都の「アロイス」から。魂の双子の話といえば、のチョイス。ヨハンはドイツ語、ドン・ジョヴァンニドン・ファン)。アロイスはチェコ語にもドイツ語(アーロイス)にもある名前。
○同人誌にも硝子になるならないの話を書いたので、人が硝子になるならないの話が好きなんだなと思った。ならながち。
○SMもそうだけど「その世界でできないこと」をあえて書こうと思ったらバイクを出したくなった。そしてSMは字数が伸びるので泣く泣く削除した。
○《ルサルカ》を最初に出したほうがいいかな…と思ったらヨハンがスーパーアルバイト戦士になった。
○客が爆発する歌劇場、おもろいからそのまま残したけど、アホみたいな設定だな……
○バッグに名前の違う旅券がいっぱい、というのは諜報映画の傑作『ボーン・アイデンティティ』(アルティメイタムかスプレマシーだったかも)で学びました。オペラde暗殺もなんか『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』から学んだ。